打ち上げ花火
夏の夜の浜辺は、昼間の暑さとは打って変わって心地よい風がそよぐ。
突然、景時に招待され望美達はこの浜辺に集まっていた。
一体、何をするのだろうか?
皆の視線が注がれる中、景時は得意げに咳払いをする。
「皆様!今日はこの景時めのために、お集まりくださり、ありがとう―――――。」
「兄上!口上は結構ですから、早くしてください。」
朔がピシャリと諌めた。
「そんな、つれないね〜。」
と、景時は肩をすくめる。
そんな彼に九郎が笑いながら
「話の腰を折られたら、仕方ないだろ。早く見せてくれ。」
と、せっついた。
「御意〜。見て驚いちゃってくれよ。」
そう言って彼が見せてくれた物は
夜空を彩る、美しい花火。
その浜辺に居た誰もがその美しさに感嘆を漏らす。
「景時さん凄い!!」
花火を見たのは時空を飛ぶ数ヶ月も前の夏以来。
まさか、こんな所で見れるなんて思わなかった望美は心の底から喜んだ。
そんな彼女を見て、景時も心底嬉しくなる。
「いやぁ。凄いなんて言われちゃ照れるなぁ。」
「でも、本当に凄いですよ。花火を作っちゃうんだもの。」
そう、気になる女性に褒められて景時は益々、嬉しくなった。
「君にそんなに喜んで貰えるなら頑張った甲斐があるね。」
景時は笑顔で夜空を見上げた。
真っ暗な夜空を色とりどりに飾る花火。
それはとても美しくて。
望美はうっとりと見惚れた。
『景時が作ってくれた花火』という事もあり嬉しくて、空を愛しげに眺めていた。
それは隣に立つ景時の目の端に写った。
同時に景時の胸が高鳴る。
まるで花火を通して、自分にそんな視線を向けてくれている様な気がして。
景時は小さく深呼吸をした。
『落ち着け』と、自分の心臓を宥める様に。
けれど、もう一度。
目の端に彼女を捕らえてしまうと心臓は再び忙しなく活動を始めた。
もしかして、俺。心臓発作で倒れるかも・・・・・・・。
こんなに心臓が落ち着かないのは初めてじゃない。
望美の一喜一憂に添うように、いつだって落ち着かなくて。
そのくせ、いつも彼女を見ていないと気になってしまう。
君を思いすぎて。あの花火みたいに、俺の心臓もパァ〜んってなっちゃったりね。
と、心の中で言った冗談に一人で笑った。
そんな彼の様子に気付かないまま、望美はポツリと呟いた。
「キレイ・・・・・。」
その呟きに景時は返事をする。
「そうだね。でも・・・・。」
続きが気になって望美は景時を見た。
すると、景時は穏やかに微笑む。
目をしっかりと見つめられて、望美はドキリとした。
「君のほうがキレイだよ?」
いつもよりも少し低めの声は何処となく色っぽくて、望美はもっとドキドキした。
そして赤い顔のまま、景時を見て止まってしまう。
「あれ?望美ちゃん?どうしたの??」
と、いつも通りに話す彼は、
今、望美が景時と同じような状態になってしまった事に全く気付かなかった。
「あ。いや・・・・。何でもないです!」
少し上擦った声で望美は言う。
予想外の彼の言動。
望美は赤い顔を見せないように花火を見続けていた。
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