星に願いを (風早編)










輝く星に心の夢を

祈ればいつか叶うでしょう



「『星に願いを』・・・・・ですか。」



満天に輝く星を見上げながら歌を口ずさんでいた千尋に優しい声が掛けられた。

振り返った先には穏やかに微笑む風早。

彼は千尋に倣うように横へ座った。

そして、空を見上げる。



「確かに、歌いたくなるくらいですね。」



数多のきらめく星々はどこか神秘的で、願いを叶えてくれそうな気にさせる。




きらきら星は不思議な力

あなたの夢を満たすでしょう




「すごいよね。あっちの世界ではこんなにスゴイの見たことないかも。」

「街の明かりにかき消されてしまいますからね。」



夜遅くまで煌々と明かりが灯る世界では流石の星達も影を潜める。

けれどもこちらの世界では邪魔をするものは何もない。

只管に輝く星を見ても飽きはこなかった。



「ねぇ。風早の願いって何?」

「・・・・・唐突ですね。」

「うん。でも、風早はいっつも私や那岐の事ばっかりで。
 自分の願いはなんだろうなぁって。」



千尋が小首を傾げて問う姿は愛らしかった。

風早は、目を細めて見つめる。



「そうですね。那岐が寝坊をしないようにとか、
 千尋が好き嫌いしないで何でも食べれますようにとか・・・・・。」

「もう。そういうのじゃなくって・・・・・・風早自身の願いだってば。」

「俺自身の・・・・・ですか?」



神に願う事。

願うよりも、願われるばかりで。

そんな事思いもしなかった。

俺自身の、願い。

「う〜ん・・・・。」と考えながら空を見上げた。

そうして、ポツリと風早は呟く。



「・・・・・千尋が、幸せでありますように。」

「・・・・・だから・・・・・風早自身の願い。」

「ふふっ。これが俺自身の願いですよ。」



何度も何度も繰り返された未来はいつだって君に辛い試練を与え続けた。

これからもきっと、それは繰り返される。

それでも、その中でも。

君が幸せを手にすることが出来るように。

流した涙以上の幸せが君を満たすように。

それがきっと、俺の一番の願い。




人は誰もひとり

悲しい夜を過ごしている




「もう。風早はいつも人のことばっかり。他には無いの?」

「う〜〜ん。困ったな。特に無いですね。」



尚も求める千尋に風早は困ったように眉を下げる。

けれど、考えても考えてもそれ以上は出てこないようで、

どう返した物かと思案していると、千尋が思いついたように微笑んだ。



「それなら、私が願うよ。」



千尋はそっとと目を閉じて、手を組んだ。

頭を下げて星に願いを掛ける。



「風早も幸せでありますように。」

「・・・・・千尋。」



風早は驚いて目を見開く。



「お人好しで、人のことばっかり心配してる風早も
 私と同じくらい幸せでありますように。」



願い終わると千尋は目を開いて風早に笑顔を向けた。

その鮮やかな笑顔に風早は敵わないなと、感じた。



「同じくらいって事は、俺の幸せと千尋の幸せは比例するんですか?」

「そうだよ。」

「・・・・・参ったな。」



それならば、この願いはどうあっても叶えなくてはならない。

戸惑いと同時に欣幸する自分が不思議と心地よかった。



星に祈れば寂しい日々を

光り照らしてくれるでしょう



「千尋の願いのままに。」



風早は暖かな胸をそっと撫でた。




   
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