星に願いを(アシュヴィン編)










輝く星に心の夢を

祈ればいつか叶うでしょう



「初めて聞く歌だな・・・・・。」




満天に輝く星を見上げながら歌を口ずさんでいた千尋に声が掛けられた。

振り返った先には物珍しそうにこちらを見るアシュヴィン。

彼は千尋に倣うように横へ座った。

そして、空を見上げる。



「異国の歌か?」



アシュヴィンは、もう一度千尋に問う。



「う〜ん・・・・。異国っていうか、異世界?私が前に住んでいた世界の歌だよ。」

「ほう・・・・・。いい歌だな。」

「うん。私も好き。」



千尋は嬉しそうに微笑む。

その愛らしい笑顔に呼応してか、

数多のきらめく星々はどこか神秘的で、願いを叶えてくれそうな気にさせる。



きらきら星は不思議な力

あなたの夢を満たすでしょう



「ねぇ。アシュヴィンの願いって何?」



唐突な質問に一瞬考えて、アシュヴィンは答える。



「そうだな。国が平和であること。民が幸せであること。作物が豊かであること。それから・・・・。」



まだまだ続きそうな願いに千尋は思わず笑った。



「アシュヴィンって意外と欲張り。」

「どうせ叶えてくれるなら一つと言わずたくさん願ったほうがイイだろう?」



ケチ臭い神もどれか一つぐらい聞き届けてくれるだろうさ。

そう言って笑うアシュヴィンの横顔が何故か千尋には悲しそうに見えた。



「自分自身の願いは無いの?」



たくさん願いをかけて、でもその中に貴方自身の願いはあるの?

欲張りな願いは全て、誰かの為のもの。

優しくて我侭な貴方だけの思いはドコに行くの?



人事なのに、悲しい顔で聞く千尋にアシュヴィンは驚く。

国を治める者に私的な願望など邪魔なだけだ。

そんなものを挟めば悲しむのは民や国。

己の願いなど思いつきもしない。



「個人の願いなど、あるわけが無い。」




まして、それが叶うはずも無いのだから。




人は誰もひとり

悲しい夜を過ごしている




当然のように答えたアシュヴィンを千尋は優しく見つめると。

そっと、手を組み頭を下げた。

天の星たちに願うように。



「アシュヴィンも幸せでありますように。」



自分で望まないのならば、他人が願ってあげる。

誰かのために願う思いはきっと、強いと信じているから。




星に祈れば寂しい日々を

光り照らしてくれるでしょう



「・・・・・酔狂な奴だな。」



アシュヴィンは鼻で笑う。



「だって、王様だって国の一部でしょ?」



犠牲になる必要なんてない。

国と民と、共に幸せであればイイ。



「アシュヴィンは出来るよ。」



根拠も無いのにそう言ってくれる千尋の言葉が

アシュヴィンの胸を暖めてくれた。



「当然だ。」



憎たらしいくらい鮮やかに笑うと、アシュヴィンはもういちど空を見上げた。

心の中で願いをもう一つ追加する。



『千尋も、幸せであるように』と。




   
  ご感想などはこちらからお願いします。
  その際は創作のタイトルを入れて下さいね。