星に願いを(サザキ編)
輝く星に心の夢を
祈ればいつか叶うでしょう
「いよっ!姫さん。」
満天に輝く星を見上げながら歌を口ずさんでいた千尋に元気な声が掛けられた。
振り返った先には白い歯を覗かせながら笑うサザキ。
彼は千尋に倣うように横へ座った。
そして、空を見上げる。
「ひょー!今夜は一段とスゲェ空だ。」
「そうだよね。ビックリしちゃった。」
数多のきらめく星々はどこか神秘的で、願いを叶えてくれそうな気にさせる。
きらきら星は不思議な力
あなたの夢を満たすでしょう
「確かに、俺も何だか歌ってみたくなるぜ。」
ゴホンと大きく咳払いをしてサザキは大きな声で宴会の時のような少し調子っぱずれな歌を歌う。
それが可笑しくて千尋はクスクスと笑った。
星々も楽しそうに煌く。
「ねぇ。サザキの願いって何?」
唐突な質問にも構わず、サザキは誇らしげに語る
「そりゃあ、もちろん。デカイ船を手に入れて海を一周!いや・・・・・2〜3周!!かな。」
「大きな願いだね。」
「海の男は志も大きくなくちゃいけねぇ。海に呑まれちまわない様にな。」
胸を張ってそう豪語するサザキがいつもよりも大きく、精悍に見えた。
「いいなぁ・・・・。世界一周。私も行きたいなぁ。」
羨ましそうに、海を行くサザキを思い浮かべて千尋は空を仰いだ。
その横顔にサザキは愛しさの滲んだ笑みを零す。
「やっぱ・・・・・。姫さんにはかなわねぇな。」
誰も信じてもくれない一介の海賊の夢物語に思いを馳せるなんて。
神様だって、鼻で笑っちまうだろうに。
それなのに、なんだって姫さんは笑わないで聞いてくれるんだ。
そして、それが堪らなく嬉しいなんて。
こんな気持ち、初めてだ。
「そうかな?サザキの方がスゴイと思うよ?」
お世辞でもなく千尋は真っ直ぐにサザキを見つめて言う。
「誰も信じて無くても、サザキは信じてるんでしょ?」
笑われても、否定されても。
己の夢や思いから目を背けずに。
一途に思い続ける事は難しくて、殆どは挫折していくけれど。
彼は違う。
誰が信じて無くても自分だけでも信じる事が出来る。
「それって、凄く勇気があると思うよ。」
人は誰もひとり
悲しい夜を過ごしている
ニッコリと微笑んでくれた千尋の眼差しにサザキはすっかり目を奪われてしまった。
言葉を返す余裕すらなくて、サザキはそのまま氷漬けのように動けない。
けれど、千尋はそれには気付かないまま何かを思いついて
そっと目を閉じて、手を組んだ。
頭を下げて星に願いを掛ける。
「サザキの願いが叶いますように!」
「えっ・・・・・姫さん!?」
「ほら。こうしたら効果は2倍!」
月や星たちよりも輝く笑顔にサザキはもう何も言えなくなってしまう。
やっぱり、敵いっこない。
サザキはやっとの思いで空を仰ぎ見た。
「・・・・・・さっきの願いはちょっと訂正。」
「え?何??」
「そ・・・・・それは・・・・・・・。秘密だ!!」
「えぇ〜?ズルイ。」
きっと、この願いはまだ叶いそうに無いから。
口にするのはもっと、もっと後にしなくちゃならねぇ。
『デカイ船を手に入れて世界を2〜3周。・・・・・・姫さんと一緒に。』
星に祈れば寂しい日々を
光り照らしてくれるでしょう
「叶うといいね!」
「ん?あぁ。叶えてみせるさ。」
サザキは笑った。
宝物を見つけ出す前の少年のようにキラキラと目を輝かせながら。

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