星に願いを(遠夜編)
輝く星に心の夢を
祈ればいつか叶うでしょう
『神子?』
満天に輝く星を見上げながら歌を口ずさんでいた千尋に気遣うような声が掛けられた。
振り返った先にはジッと見つめたままの遠夜。
彼は千尋に倣うように横へ座った。
そして、空を見上げる。
『・・・・歌を、歌っていたのか?』
「うん。星が綺麗だから。」
見つめる先の空には言葉を失くすほどの輝き。
数多のきらめく星々はどこか神秘的で、願いを叶えてくれそうな気にさせる。
『綺麗な歌だった。』
素直にそう述べると、千尋は少し照れながらも嬉しそうに笑った。
「ありがとう。私、この歌好きなんだ。」
『神子が歌うから、星も月も喜んでる。』
「本当?嬉しいな。」
遠夜の言うとおり、空は喜んでいるかのように輝きを増した。
それがとても、嬉しくて千尋も一層笑顔を濃くする。
きらきら星は不思議な力
あなたの夢を満たすでしょう
「ねえ。遠夜の願いって何?」
『俺の・・・・願い?』
「うん。遠夜の欲しいものとか、したいこととか・・・・。」
千尋の言葉と共に、遠夜は考えた。
『俺の願い・・・・。』
そっと胸に手を当てて自問するように考える。
欲しいもの、したいこと。
今がずっと続いたらいい。
こうして、隣り合って空を眺めて、歌を歌って。
そんな時がずっと続いて欲しい。
けれど、そんな願いは叶わない事は知っている。
傍に居たいと願っても、いつかお前と俺は袂を分かつ時が来る。
それは誰にも、何にも留めることの出来ない定め。
花や木々が枯れ行くのと同じで
変わらない物など無い。
それが生きるものの常、物の理。
遠夜は、目を伏せた。
淋しくて、悲しくて。
人は誰もひとり
悲しい夜を過ごしている
ふと、視線に気付く。
隣の千尋は好奇心を宿した子供のような瞳で遠夜の答えを待っていた。
その瞳を見つけて、遠夜は想った。
例え変化が世の道理であろうとも、
不変であって欲しい願い。
遠夜は千尋に向けて小さく笑むと、思いついた言葉を伝える。
『神子が・・・・・ずっと笑ってくれてたらいい。』
歳を経ても、姿が変わっても。
きっとお前の笑顔は、変わらない。
俺を、全てを優しく包んで満たしてくれる明るい笑顔。
きっと、それが俺の欲しいもの、望むもの。
千尋は恥ずかしそうに、頬を赤くした。
そして、遠夜の願いを叶えるように飛び切りの笑顔を見せる。
「ねぇ、遠夜の歌が聞きたいな。」
その可愛らしい願いに遠夜は頷いた。
千尋の顔に笑顔が溢れるように、思いを込めながら。
星に祈れば寂しい日々を
光り照らしてくれるでしょう
美しい歌声が星空に溶けていった。
愛しさと、少しの切なさを織り交ぜながら。

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