手に入らない物程、欲しくなる










「サザキ!お願いがあるの。」



そう期待に満ちた眼差しで可愛い女性に乞われれば、大抵の男は頷くもので。



「姫さんのお願いなら、喜んで。」



サザキはニッコリと笑い、二つ返事で了承した。

けれど、一国を担うであろう姫の『お願い』とは一体なんであろう?

金銀財宝?

それとも、女性らしく美しい着物や髪飾り?

今すぐ、橿原宮を取り返せなんていう無茶なお願いは遠慮願いたいが・・・・・。



「で?どんなお願いなんだ?」

「あのね、サザキ。サザキに、海○王になって欲しいのっ!」

「・・・・・海○王??」



聞いた事の無い名称のような物にサザキは首を傾げた。



「姫さん。何だ?その、海○王って。」

「あのね。グ○ン○ラインの何処かにある、ひとつなぎの大秘宝を・・・・・・。」

「はい。ストップ。」



千尋が熱く語りだした口を那岐が塞いだ。



「那岐っ!何するの?」

「あのさ、千尋。著作権とか考えて喋りなよ。」



那岐は呆れて溜息を吐く。



「伏字にしてるから大丈夫じゃない?」

「伏字だらけじゃ読み難いだろ。大体、何でそんなお願いしてんのさ。」

「だって、向こうの世界じゃ海賊なんていないんだもの。」

「居たら大問題だから。」

「それに、サザキは本物の海賊なんだよ!?」

「自称ね。」

「私、海賊って始めて見たわ。」

「船無いけどね。」

「オイオイオイッ!!!船無いとか言うな!それから自称じゃない!!れっきとした海賊だっ!!!」



一々、突っ込む那岐にサザキが抗議の声を上げた。

けれど、那岐は全く気にも留めずに呆れた溜息を千尋に向ける。

これに、サザキは息巻いた。



「こら!無視すんな!」

「無視じゃないよ。面倒だから放っといてるだけ。」

「同じだろうが!お前、もうちっと年長者を敬え!」

「はいはい。五月蝿いから黙ってて下さい。年長者さん。」



『面倒くさいからもう黙ってろ。』とでも言うような視線で那岐は言った。

それを察してか、サザキはグッと押し黙る。



「というか、何でいきなりそんな事言い出したのさ?」

「・・・・・だって・・・・・。」



那岐の最もな質問に、千尋の蒼い目に涙が滲んだ。



「だって・・・・もう、あの世界には帰れないんだよ?」

「・・・・・千尋・・・・・。」



千尋は悲しげな声音を漏らした。

この世界の王になる千尋は、もうあの平穏な世界には帰れない。

どんなに願おうとも、叶うことの無い願い。

そんな千尋に那岐は、かける言葉が浮かばない。

千尋が、一層悲しげな声を上げた。



「もう・・・・・・ワン○ースの続きを見れないんだよっ!!」

「・・・・・・そういう事か。」

「折角、今まで単行本集めてたのにっ!アニメだって、時間帯が変わっても欠かさず見てたんだよ!?」

「そういえば、千尋は好きだったね。あの漫画。」



那岐は千尋の部屋にあった本棚に並ぶ漫画本を思い出した。



「那岐は気にならないの!?これから出てくる仲間の事とか!今後の展開とかっ!」

「全く。」

「せめて・・・・せめて時空を超えるって判ってたなら単行本全部持ってきたのにっ!」

「そんな事したら歴史的大問題だろうが。」

「だからね、考えたの。こうなったら、本物の海賊に目指してもらおうって。サザキにル○ィになってもらおうって!」



キラキラと瞳を輝かせながら千尋は言った。

そんな中、サザキが手を挙げた。



「で?結局何なんだ?海○王って?」

「名前の通りよ。この世界の海を制した者。海賊の王様の事よ!!」

「う、海を制する海賊の王!?」

「そう!全ての海賊達の頂点に立つ者。それが海○王よ。」



海を制する者・・・・・全ての海賊達の頂点・・・・・海○王・・・・・なんてイイ響きなんだ。

サザキの目が千尋に負けないくらい輝きだした。



「お願い!サザキ!無理なお願いだと思うけど、サザキみたいな凄い海賊になら出来ると思うの!」

「ひ、姫さんっ!アンタ、そこまで俺のことを・・・・・。」



千尋の言葉にサザキは胸の奥がジーンとした。

こんなにも、自分を海賊と認めてくれて期待をしてくれるなんて。

海賊冥利に尽きる。

男なら、これに答えないわけにはいかない。

サザキは千尋の手を取った。



「任せてくれ、姫さん。アンタの期待は裏切らないぜ!」

「本当!?嬉しい!ありがとうサザキ!」

「見てな!きっと立派な海○王になってやるぜ!」



そして、サザキは手下達の方を向き、声高らかにこう言い放った。



「野郎共!良く聞け!海○王に、俺はなるっ!!!!!」



大喝采がこだました。



「・・・・・・。」

「どうしました?那岐。」



こめかみを押さえて嘆息する那岐に風早が声をかけた。



「あんた。千尋に『フィクション』ってのが何なのかちゃんと教えてやんなよ。」

「アハハハ。想像力が豊かで良いじゃないですか。」

「それは、幼稚園までの話だろ。」

「人間、夢が無いと生きていけませんからね。」



大盛り上がりの海賊達と千尋を、微笑ましく見る風早の横で。

那岐は頭痛の種達を呆れながら見つめた。




〜あとがき〜
二次創作だからこそ許される伏字のオンパレード。
なんか、すいません。
皆さん、判りますよね?

国民的ロングラン海賊アニメですよ。
アレ、アレ。




   
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