俺様でもキスは優しい










我侭で、自分勝手で、ちょっと考えがオカシイ。

たまに、思う。

なんで私、この人の事好きなんだろう?って。






「ちょっと・・・・・・。いい加減どいてよ。」



望美は怒気をこめた声で、膝の上でごろ寝をする恋人に声をかけた。

けれど、返答は無し。

望美の抗議など耳には入っていないかのように安らかな寝息を立てる。

それがまた腹立たしい。

休日の今日は特に何も用事は無い。

が。

用事など無くてもやろうと思えばやることはある。

掃除や洗濯。

知盛がやるはずの無い部屋の片付け等等。

現に、望美は洗濯機を稼働させていて、先程、終了を告げる機械音が鳴り響いた。

しかし、こんな風に膝に陣取られては望美は身動きが取れない。

引っぺがそうとするも、知盛はしっかりと望美の足に腕を巻きつけて離れてはくれなかった。



「知盛・・・・・。洗濯物干したいんだけど・・・・・。」

「・・・・・・・。」



またしても返答は皆無。

寝てはいないのは分かっている。

引き離そうと試みる度に彼はグッと力を入れてくるのだ。

そんな態度が原因となって、望美の苛立ちは増す。



「あのね。洗濯機に入れっぱなしだと臭いが付くんだけど。」

「・・・・・・。」

「それに、せっかくのお休みに、ごろ寝してるのってどうなの?」

「・・・・・・・・。」

「もう!いい加減にしないと投げ飛ばすよ!?」

「それは、是非やってもらいたいものだな・・・・・・。」



最終手段の脅し文句を吐くと、知盛は目を開いて面白そうに望美を見上げた。

口元は挑戦的な笑みを浮かべている。



「・・・・・華のように可憐な乙女が、男を投げ飛ばす姿はさぞ、見物だろうな。」



「クククっ。」と喉の奥で笑い声を立てる。

やりたければどうぞ。

とでも言っているかのよう。

そんな悪びれもしない姿に望美は柳眉を寄せた。

本当に投げ飛ばそうかと、脳裏を過ぎる程。

しかし、どうあっても体格差があるのでそれは不可能。

それを知ってか、知盛はニヤニヤと望美の怒り顔を見上げるだけで動こうとしない。

成す術が見当たらない望美は、仕方なく彼の視線から顔を背けるしかなかった。



「・・・・・神子殿はご立腹のようで。」

「分かってるなら退いてよ。」

「フッ・・・・。つれない女だな。」



今度は望美の髪を弄りながらリラックスする知盛に望美の許容も限界だ。



「10数えるまでに退いてくれなきゃゲンコツするよ?」

「どうぞ・・・・・。」



完全に退く意思は無いらしい。

これはもはやカウントダウンする必要は無いだろう。

望美はコブシを握り「はぁ〜。」と息を掛けると、それを振り下ろした。

込めた力はホンの少し。

流石に、滅一杯力を込める程、鬼にはなれない。

けれど、それは直撃する事無く、知盛が望美の手首をつかんでしまった。

自然と絡み合った視線にドキリとした望美に、知盛は嬉しそうに言う。



「・・・・・良い拳だな。」



すると、少し体を起こして、そっと触れるようなキスを望美の唇に送った。

柔らかくて、優しくて。

およそ、攻撃的な知盛の物とは思えないほど暖かなキス。

先程までの負の感情が吹き飛んで行ってしまったかのように。

望美の頬は赤く染まった。

知盛はそれを撫でる。



「それって・・・・・褒めてるの?」



拗ね気味の声で知盛の台詞の意味を問うと彼は首を縦に一つ振る。



「・・・・あぁ。」

「・・・・・複雑なんだけど。」



望美は「う〜ん。」と唸った。

それをまた、面白そうに見て取って、知盛は望美の両頬を両手で包んで、引き寄せる。

もう一度。

いや、それ以上に。

愛しさ全てを注ぎ込んだキスを望美に捧げて。

二人は小さく微笑み合った。




〜あとがき〜
このあとで、一緒に洗濯干してたり。
難しい顔して慣れない洗濯物と格闘するチモに萌え・・・・・・。





   
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