思いのままに
果ての無い海の上。
空と海の境界がわからない程、それぞれに澄んで美しい蒼が広がる。
けれど、やっと手に入れた大切な彼女の蒼い瞳はそれ以上に美しく、愛しさばかり込み上げる。
サザキはふと、隣で同じように景色を眺める千尋を見た。
海風に揺れる黄金の髪。
その中で微笑む彼女は何度目にしても飽きる事は無く、より一層思いが膨らんでいく。
「・・・・・姫さん。」
ポツリと呟いて、振り向く彼女をサザキは己の胸に引き寄せた。
「サザキ?」
ただ、名を呼ばれただけなのに。
胸がグッと熱くなる。
愛しい。
その思いだけがサザキの心を支配していく。
「千尋・・・・。」
いつもの呼び名ではなく、彼女だけを指し示す名を呼んで、そぅっと唇を寄せた。
離れないように、千尋の体を自身の手で縛って無心に口付けをする。
深く、深く。
海の底の様に、どこまでも深く。
突然の口付けで呼吸が定まらない千尋は時折、苦しそうに声を漏らすがそれでもサザキの口付けは終わらない。
次第に千尋の体は力が抜けていく。
不十分な呼吸と、サザキの甘い口付けに蕩けてしまうように。
千尋はサザキの背に手を添えた。
このままでは自力で立っていられそうに無かったから。
と、その背に触れられた感触で、サザキはハッとして顔を離した。
不覚にも、我を忘れてしまってい事に気付く。
それほどに千尋との口付けは甘美で自身を惑わす麻薬のよう。
そして、思い返せば、千尋が苦しそうな声を出していた気がする。
大丈夫だろうかと、千尋の顔を見ると。
「っ・・・・・!!!」
あまりの口付けの深さに惚けて、千尋は恍惚とした表情でサザキを見上げていた。
サザキの胸は一際高鳴る。
千尋のその顔は唯、サザキを誘っているかのようにしか見えない。
「姫さん・・・・・・。」
その顔は反則だ。
そんな顔をされては、折角自制したのに、また。
思いが溢れ出す。
今度は歯止めが利かない自信があった。
「すまない。姫さん。もう、限界だ。」
こんな人目の付く甲板では出来ない事を望んでしまう。
その意味に気付いて、千尋は顔を赤くした。
「な、何で!?」
「何でって、そりゃぁ姫さん。」
明らかに狼狽する千尋を更に引き寄せて、サザキは低い声で言う。
「こんなに可愛い、あんたがイケナイんだ。」
だから仕方ないだろう?
「大人しく責任取ってもらおうか。」
「もう・・・・・。」
抵抗する気はゼロ。
望まれて、嬉しいと思うのが真実ゆえ。
ただ、思いに身を任せる。
愛しいと思う、その気持ちに。
海凪の風は優しく頬を掠め、二人はもう一度口付けをした。
〜あとがき〜
この後に手下達が乗り込んできたら面白い(笑)
手下1「大将〜!姫さ〜ん!飯の用意が整いやしたぜ〜。」
手下2「早くしてくださいよ〜。俺ら、もう腹ペコで死にそうだ。」
手下3「折角の飯が冷めちまいますよ〜。」
ムードぶち壊し。
サザキ「〜〜〜〜っ!!!てめぇら〜〜〜〜!!」
で、このあとサザキ船長のヤキ入れが起こるわけですよ。
カリガネ「・・・・・・・・飯が冷める。食え。」
千尋「え?あ。じゃあ、いただきます。」
手下「た、大将〜〜。もう勘弁してくだせぇ〜〜。」
サザキ「うるせぇ〜!!」
KYな手下達が大好きです。
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