お正月のススメ 〜凧揚げ〜
昼食後、鼻歌交じりに出かける準備をしている景時を見つけて望美は声をかけた。
「景時さん。どこかお出かけですか?」
「あ。望美ちゃん!!そうそう。ちょっと試作品を試しにね〜。」
「試作品??」
疑問符を頭に並べながら景時が自慢げに見せた袋を除くと中にはたくさんの凧が入っていた。
その種類も様々で三角形の形をしたものや、『奴凧』と呼ばれるものなどたくさん。
「どうしたんですか?こんなにイッパイ。」
「いやぁ。この前『ほーむせんたー』ってとこに行ったらたくさん在ってさぁ。面白そうだから作ってみたんだよね。」
「え!?これ景時さんの手作りなんですか!?」
「そうだよ〜。調べてみたら形も色々在るらしくてたくさん作っちゃったんだよね。」
「スゴイですね!!買ってきたのかと思いました。」
望美はその出来栄えに目を丸くした。
「でも。凧って一人じゃ上げられないんじゃないですか?」
「そうなんだよ〜。誰か誘って行こうと思ってるんだけど・・・・。」
「私行きたいです!!」
「ホント?じゃぁ、頼むよ。」
「はい。あ!他にも誘ってみませんか?」
「そうだね。大勢のほうが盛り上がるよね!!」
二人は早速、暇そうな人間を探した。
望美と景時に誘われたのは、九郎と敦盛とヒノエそして、朔。
譲の助言で『凧は電線がある所ではしてはいけない。』と言われたので公園にやってきた。
着いた途端に、ヒノエがフゥとため息を吐いた。
「凧なんて誰も上げてないじゃん。」
「そうだね。最近の子はしないのかなぁ〜?」
「う〜ん。私も生で見るのは初めてだし。」
「じゃあ。俺が先輩だね♪よ〜し張り切って教えちゃうよ!」
景時は俄然ヤル気が出たようで腕まくりをして袋から凧を取り出した。
「すごいな・・・・・・。」
「へぇ。中々上手いね。」
「あぁ。見事だな。」
「まぁ。兄上の手作りにしては中々ね。」
様々な形の凧を皆感心しながら覗き込んでいた。
「じゃあ。やるよ〜。俺が抑えてるから、九郎はこの糸巻いたのを持って、風向きとは逆方向に走ってね。」
「ああ。分かった。」
九郎は景時から糸巻きを受け取る。
そして、景時は凧を持って少し離れた風下に立った。
「いいよ〜。九郎走って〜。」
景時の合図と同時に九郎は、言われたとおり風上へ走り出した。
糸が張りそうな所で景時が凧を離すと、凧は見事に空中へ揚がっていく。
「九郎。止まって。流されないように糸を軽く引っ張って。」
「・・・・・こうか?」
走るのを止めて、上空に上がった凧を見上げながら少し覚束ない手つきで糸を引く。
すると、凧はフワフワと軽やかに空を舞った。
望美は興奮気味に手を叩いた。
「すごい!九郎さん上手!!」
「そ・・・・そうか?まだ良くコツが掴めんが・・・・・。」
「大丈夫。中々上手いよ九郎。」
景時も自分の作った凧が上手く揚がって満足そうに頷いた。
「さぁ。今度は違うのを上げてみよう。今度は敦盛くんね。」
「わ、私か?」
「そうそう。はい。これ持ってね。」
突然の指名に驚きながらも、敦盛は九郎がしたように糸巻きを持って風上へ走る。
そうしてこちらも空高く舞い上がり気持ちよさそうにフワリフワリと空を泳ぎだす。
「わぁ!敦盛さんも上手!!」
空の凧を望美は目を輝かせながら見上げていた。
すると。
「ねぇ。お兄ちゃんたち何してるの?」
「コレ何??」
公園で遊んでいた子供達がワラワラとやって来た。
物珍しそうに凧を覗き込んだり、凧糸を引く九郎と敦盛の近くで空を見上げたり。
どうやら好奇心に釣られてやってきたようだった。
その子供達に、景時は優しく教える。
「お兄ちゃんたちはね、凧揚げしてるんだよ〜。やってみる??」
その一言に子供達は一斉に反応した。
「僕やりたい!!」
「僕も!!」
元気良く手を上げる姿に景時もヒノエも望美も、笑みが零れた。
「よし。じゃあ、俺が持ってやるよ。」
「ヒノエくん出来るの?」
「九郎達のを見たからね。任せなよ。」
嬉しそうに凧を受け取った子供に、ヒノエはさっきの景時と同じように
説明しながら凧揚げを手伝ってやった。
ふと、九郎と敦盛に視線を向けると、何時の間にやら凧糸を子供に渡して笑顔で教えて上げている。
その姿が何とも微笑ましくて望美と朔は顔を見合わせ微笑んだ。
「景時さん。手伝いますね。」
子供に囲まれている景時の横へ行って
望美と朔も凧を上げる順番待ちの子供の手伝いをし始めた。
気づけば公園に居た以上の子供達が寄ってきてその上げる姿をキラキラした目で見上げている。
それを見る景時も非常に嬉しそうだ。
「景時さん。嬉しそうだね。」
「そうね。こんな発明なら大歓迎だわ。」
「それに、ヒノエくんも敦盛さんも九郎さんも。」
「ふふっ。まるで童心に返ったみたいね。」
楽しそうに空を舞う凧は地上ではしゃぐ子供達のように生き生きと空を遊覧していた。
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