愛してるの相乗効果
思いの伝え方は難しい。
人は言の葉を文に託し、言霊を風にのせる。
『思い』を乗せた途端、言の葉には力が宿り特別なものへと姿を変える。
そうして、伝えられた思いに人は、一喜一憂するのだ。
遠夜は歌を口ずさんだ。
俺の思いは歌になる。
お前を愛しいと思う気持ちをたくさん込めて、歌を歌う。
思いを形にするのは難しい。
「大好きだ。」
と、声に出しても。
何度も口にしても、俺が抱いている思いの半分も伝わっていない気がして。
どうしたら、もっと伝えられるだろうか?
「・・・・・・神子。」
「なぁに?遠夜。」
隣の恋人は優しい笑顔で見返してくれる。
肩まで切りそろえられた髪をやんわりと掬いながら、遠夜はポツリと言う。
「神子・・・・。大好きだよ。」
愛情を込めて送ると、千尋の優しい微笑が帰ってきた。
「私も、遠夜が大好きだよ。」
すると、その笑顔が愛しくて、もっと、もっと大好きだと心が叫ぶ。
「うん。俺も、大好きだ。」
――――― 足りない。
言葉を紡ぎながら、遠夜はそう思った。
伝え切れていない思いが胸の中で燻っているようだ。
どうしたらこの焦燥は消えてくれる?
遠夜は千尋を引き寄せた。
包むように胸に抱いて、千尋の首に顔を埋めた。
距離が無くなれば、近くに寄れば、足りない思いが伝わるだろうかと思っての行動。
しかし、それを知らない千尋は突然の出来事に、心拍が上がる。
抱いた千尋は、柔らかくて、暖かくて。
遠夜の愛しさも上がっていく。
「・・・・・・大好きだ。」
今度こそ、伝えきれただろうか。
不安げに千尋の顔を覗き込んだ。
すると、いつもは優しい微笑で「私もよ。」と返してくれる彼女は頬を赤らめてこちらを見返していた。
恥ずかしそうに唇を噛む仕種に、気付けば遠夜は口付けをしていた。
「神子・・・・・・大好き。」
口付けの合間に呟くと、何故だかいつも以上に心は満たされていく。
愛しいと思う言の葉と。
愛しさを示す行動と。
合わせるだけで、どんどん思いが流れ込んでいくよう。
真っ白かった思いが、鮮やかに色付いていく。
何故だろう。
もっと、それを確かめたくて角度を変えながら遠夜は口付けと愛の言葉を繰り返す。
千尋が苦しそうに微かに息をもらすまで遠夜は何度も、何度も、繰り返した。
顔を離すと、千尋はこれ以上ないほどに顔を紅潮させて抱きしめた体から伝えられる鼓動が早鐘を打っていた。
そうして、遠夜はいつもの胸の使えが無いことに気付いた。
俺の思いは伝わった?
千尋は深く顔を伏せて遠夜の胸に隠れる。
「神子?」
「わ、私も・・・・・・。遠夜のこと、大好きだよ。」
いつもと違った、少し上ずり気味の声で千尋は告げた。
それが一層、嬉しくて。
「うん。俺もだ。」
遠夜は最上の笑顔でまだ、顔を上げられない千尋の頭を優しく撫でた。
〜あとがき〜
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ちなみに背景になってるピンクのカーネーションの花言葉は「熱愛」です。
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