嬉しいこと
「ねぇ、白龍。」
急に声をかけられ、でも嬉しい表情で白龍は振り返った。
「何?神子。」
小首を傾げながら尋ね返す姿は、今の大きい白龍にはとても不向きで
望美は可笑しくて小さく噴出す。
白龍は望美の笑顔を作り出した理由が分からなかったが、とりあえず嬉しかった。
「笑ってゴメン。白龍。」
「ううん。私は神子の笑顔が好きだから、嬉しいよ。」
白龍も笑顔になる。
「あのね。聞きたいことがあるんだけど。」
「何?私に分かることなら何でも答えるよ。」
大好きな神子の為だもの。
恥ずかしげも無くそう口にする白龍に頬を染めながら望美は一つの質問を投げかけた。
「白龍の誕生日っていつ?」
その問いに白龍はキョトンとする。
「神子。誕生日とは何?」
「え?生まれた日の事だよ。」
すると、白龍は申し訳なさそうな顔をした。
「神子。その質問には答えられない。」
「?どうして??」
「私は『人』ではないから。いつ生まれたのかも分からない。」
「あ・・・・・。そうなんだ・・・・。」
やっぱり。と言い、望美は少しガッカリしたようだった。
それを見て、白龍は一気にシュンとした顔をする。
「神子・・・・。ごめんなさい。」
そう、白龍は謝った。
望美は慌てて首を振る。
「そんな!謝る必要なんて無いんだよ?」
「でも。神子を悲しませてしまったから。」
項垂れる白龍の髪を優しく撫でながら、望美は白龍に微笑んだ。
「ねぇ。白龍。私、白龍がそうやって悲しい顔をするのが一番悲しいんだよね。」
「?そうなの?」
白龍は不思議そうな顔で望美を見つめる。
「うん。だからね、嬉しい顔をしてくれないかな?」
白龍はその言葉を聞き返した。
「神子は私が嬉しいと嬉しいの?」
「うん。とっても嬉しいよ。」
望美は照れたような表情で答えた。
すると、白龍はパッと明るい顔になる。
「じゃあ、神子と私は同じだね!」
「え?」
「私も神子が悲しいと同じ気持ちになる。でも、神子が嬉しいと私も嬉しい。」
心が繋がっているかのように。
そんな白龍の台詞に望美は微笑んだ。
嬉しい。
とっても嬉しい。
彼と心が繋がってると思うだけで。
同じ気持ちだと思うだけで。
嬉しくて頬が緩んでしまう。
「それってステキだね。」
望美は頬を押さえながら言った。
白龍はまた首を傾げる。
「ステキ?ステキとはどういうこと?」
「それはね。」
―――――幸せって事。
「神子。『誕生日』とはいつでも良いの?」
「え?う〜ん・・・・・・・。どうかな?良いと思うけど。」
「じゃあ。神子が私の『誕生日』を決めて。」
「え!?」
「そうしてくれたら私は嬉しい。」
望美は笑顔で頷いた。
白龍もニコニコと絶えることなく笑顔を浮かべる。
嬉しい事をしてあげたい。
大好きなアナタに。
きっと、私も同じ気持ちになれるから。
ご感想などはこちらからお願いします。
その際は創作のタイトルを入れて下さいね。