包み込む温もり










冬は本番となり、寒さは一層増していた。

まさに、芯まで凍える寒さ、といった所。

望美は一つ、大きなクシャミをする。

陽が出ているから大丈夫だろうと、やや薄着で来たのが失敗だったようだ。

ふるりと、体が震えた。



「神子。大丈夫か?」



そんな望美の隣でリズヴァーンの顔が心配の色を浮かべる。



「全然、大丈夫です。」



元気よく答えるも、リズヴァーンの顔が心配そうなのは変わらない。

むしろ、少し眉間に皺が寄った。



「神子。無理をしてはいけない。寒いのだろう?」



そう問う声は否定を認めないような声音で、望美は素直に答える。



「うっ・・・・・はい。ちょっとだけ。」



答えと同時に我慢していた寒さが身に掛かって来て望美はまたも体を振るった。



「これを着けなさい。」



リズヴァーンは自身の首に巻いていた赤いマフラーを外した。

そっと、望美の首に巻きつける。

望美の首元は外気の寒さから守られて、代わりに柔らかな温もりに包まれた。



「あ、ありがとうございます。・・・・・・先生は寒くないですか。」

「あぁ。問題ない。」



望美が気に病まないようにリズヴァーンは目を細めて笑った。

大丈夫と、いうように。

それに安堵すると、望美は本当に幸せそうにマフラーへ顔を埋める。

それほどまでに寒かったのだろうか?

リズヴァーンは望美をじっと見た。

と。



「このマフラー、先生の匂いがします。」



少し照れくさそうに望美がそう言う。



「・・・・そうか。」

「はい。何だか、先生に包み込まれてるみたいで・・・・・・嬉しいです。」



ほんのりと染めた頬を摺り寄せるように、マフラーに寄せた。

このまま眠りに落ちてしまいたいほどの、安心感と暖かさ。

リズヴァーン自身に優しく抱きすくめられ、包まれているかのようで体だけでなく、胸の奥まで暖かくなっていくよう。

自然と頬は緩み無意識に幸せそうな微笑を浮かべた。

が、突然その温もりが望美の元から去っていった。

リズヴァーンが望美からマフラーを奪ったのだ。

この仕打ちに望美は驚きの顔をする。



「・・・・・・先生?」



だが、その直後、望美は新たな温もりに包まれた。

それは先ほどのように首元だけでなく、彼女の細い体全身に温もりを授ける。

大きな体。

リズヴァーンのそれが、優しく包み込むように。

望美を抱きしめていた。



「お前を包む、このマフラーに嫉妬した・・・・・と言ったらお前は笑うか?」



お前を幸せに出来る果報者は私一人で良い。

そんな思い上がりを、幼稚な思いを。

お前は笑うだろうか?

けれど、リズヴァーンの背にそっと、手を回すと望美は暖かい声音で呟いた。



「笑いません。」



私に幸せを与えてくれる人は貴方一人で良い。

だって、こんなにも心が暖かくなれる。

貴方が思ってくれるだけで。

望美は今度はリズヴァーンの胸に頬を摺り寄せた。

トクトクと聞こえる心音がこれ以上ないほど望美を落ち着かせ。

この場所が何よりも幸せな場所だと感じさせてくれる。

もっと、もっと。

包まれたい。

貴方の愛に。

貴方の全てに。

胸の中にある愛しい女性を、リズヴァーンはより一層抱きしめた。




〜あとがき〜
寒い日は人肌恋しいですよね。
自分以外の人の体温って何でか心地よいんです。
フシギ、フシギ。

ちなみにウチの旦那。
片桐が望美ちゃんのように震えていても笑ってみてます。
「迂闊な奴め!!!」
とか言いながら。
身包み剥いでやりたくなります。






   
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