第1話 はじまり








「はぁ〜。涼しい〜。」


木に寄り添い、望美は気持ちよさそうな声を上げた。



熊野の山道を進み、勝浦を目指している最中。


夏の暑さと、徒歩での移動で望美の体力は限界だった。


そんな彼女を見かねて同行していた誰からという訳でもなく休憩を取ることになった。


少しでも暑さから開放されるため、望美は生い茂る木々の中を進み、程よい木陰を見つけ寄り添う。


涼しい風が望美を優しくそよいでくれた。


疲れが溜まっていた事もあり、ふと。望美は睡魔に襲われる。





少しくらい、イイよね?





そう、自分に許可を与えると望美は瞼を閉じた。











「いかん!!このままでは遅刻してしまう!!」


突如、望美の耳に慌てた声が聞え、望美は目が覚めた。


一体何事なのか。


目を擦り声の主を探す。


すると、望美の目の前には小さな幼児くらいの身長の少年がいた。


注目すべきは彼の頭上。


ピンッと形のよい二つの耳が付いている。


その彼は大きな懐中時計を見ながら大慌てで走り出した。


その少年の姿。


腰より下まで伸びたオレンジのクセっ毛。

気の強そうな茶色の瞳。


もしかして・・・・・・いや。もしかしなくても。



「九郎さんっ!!??」



望美はもう一度目を擦った。


今度は力いっぱい。


すると、少年は立ち止まりこちらを向いた。


「なんだ?何か用か?」


不機嫌そうな口調はよく知っている九郎そのもの。

望美は自分の頬をつねった。


「用が無いのなら失礼する。兄上にこの書状をお渡しせねばならんのだ。」


そういうと彼は小さな穴の中へ駆け出して行ってしまった。



「・・・・・・『九郎さん』って言って振り返ったって事は九郎さんなんだよね?」



望美は呆気に取られたまま、動けなかった。




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〜あとがき〜

只単に、九郎さんのウサ耳が頭に浮かんだだけ。

手探りで始めた連載なんでどうなることやら分かりません(←無責任)


   
  
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