第七話 猫は突然姿を消す










「神子!!」



力強く、自分を呼ぶ声に望美は目を開けた。

眼前には金髪の背の高いマントを羽織った人物。

彼の正体に気付いて、望美は明るい声を上げた。



「先生!!」

「神子。大事は無いな?」



そう、尋ねるリズヴァーンに望美は大きく頷く。



「ならば神子。剣を構えなさい。共に、怨霊を打ち払うのだ。」

「はい!先生!!」



リズヴァーンの加勢により望美達の気合は高まる。

それに、緩んだのか。

鉄鼠は少し怖気づくかのように後ずさりをした。

これを、望美が見逃す筈も無く。



「たぁぁぁぁぁ!!」



勇ましい掛け声を上げて渾身の一撃を加えた。



「チュゥゥゥゥゥ!!!」



その一撃は致命打となったらしく鉄鼠は動かなくなる。



「今だ。神子!」



そう、リズヴァーンが合図をしたと同時に。

望美は封印の言葉を唱和した。

そして、光の中へ鉄鼠は姿を消す。

これに、惟盛は愕然とした。



「わ、私の可愛い鉄鼠が・・・・・・。おのれ。許しませんよ・・・・・・。」



惟盛は怒りでプルプルと体を振るわせる。



「に、逃げた方が良いんじゃないかなぁ〜?」

「わ、私もそう思います・・・・・。」



景時の意見に望美は大きく頷く。



「ならば、私が殿を務めよう。皆、早く行きなさい。」

「でも、先生!危険です!!」

「問題ない。さぁ。早く行きなさい。」



望美の深憂にリズヴァーンは首を振った。



「神子。今はリズ先生を信じよう。」



敦盛が心配顔の望美に言う。

その言葉に望美は小さく頷いた。



「・・・・・・判りました。先生!気をつけて下さい!」



そう、強く言って3人は森の奥へ奥へと、駆け出していった。








「こ、ここまで来れば大丈夫だよね?」



息を切らせた景時が問う。

すると、望美と敦盛も首を縦に振った。



「結構走りましたもの。大丈夫ですよ!」

「しかし、城からは遠のいてしまったな。」



振り返れば今しがた走って来た森の木々の隙間から城が微かに見えた。

逃げてきたのは逆方向。

一同は溜息を付く。

と。そこへ。

シュン!と言う音と共に誰かが姿を現す。

現れたのはリズヴァーンだった。



「先生!!」



望美は嬉しそうな声で近寄った。



「先生!ご無事だったんですね!?」

「うむ。心配をかけたようだな。」

「いえ。ご無事ならそれで良いんです。」



望美はニッコリ微笑む。

安堵の笑みにリズヴァーンも釣られて微笑んだ。



「ところで、神子。城を目指しているのか?」



不意に、笑顔を解除してリズヴァーンは真面目な声で望美に尋ねた。



「あ。そうなんです。でも・・・・反対方向に来ちゃって。」

「お城へ行くならさっきの道が近道なんだけど・・・・・また、惟盛草に会っちゃうからねぇ〜。」



景時は「う〜ん・・・・・。」と頭を捻った。



「そうか・・・・・。ならば。」



そう言いながらリズヴァーンが今来た道とは反対の更に奥を指差す。



「ここを真っ直ぐ行きなさい。」

「え?でも反対方向なんじゃないですか?」

「あぁ。だが、お前の運命を開く者に会うことが出来る。」

「運命を開く者・・・・・ですか?」

「うむ。」



リズヴァーンはしっかりと頷く。

その姿に望美も頷いた。



「判りました。行ってみます!」



その応えにリズヴァーンはもう一度頷く。



「それと、先生。」



急に、望美は話を変えるかのように尋ねた。



「どうした?神子。」

「あの・・・・・失礼だとは思うんですけど。聞きたい事があって。」



少し、戸惑いながら、遠慮しつつ望美はそっと、リズヴァーンの頭上を指差した。



「それって、猫耳ですよね?」



リズヴァーンの頭には敦盛や九郎と同じように動物の物のような耳が乗っていた。

三角に尖ったそれは、猫の耳に良く似ている。



「・・・・・・・。」

「先生?」



黙りこくったリズヴァーンに望美は名を呼ぶ。

そして、彼から返ってきた答えは。



「・・・・・答えられない。」

「え?あの・・・。」

「答えられない。」



と、だけ言い残してリズヴァーンは消えてしまった。



「・・・・・やっぱり尻尾もついてんのかな?」



望美はそんな事を考えていた。






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 〜あとがき〜
先生の猫耳・・・・・。想像だけで鼻血が止まりません。



   
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