昔、むかし。
ある所に、望美と言う美しい娘がいました。

彼女は早くに母親を無くし、継母達と共に暮らしていました。



「望美さん。」

「はい。お義母さま。」

「今日は天気が良いですから、少し出掛けませんか?」

「え?でも、お昼の仕度がまだ・・・・・。」



そう、遠慮する望美に連れ子達が言いました。



「先輩。食事の仕度くらい、俺に任せて下さい。」

「そうよ望美。いってらっしゃい。」

「え?でも・・・・・。」



連れ子達の台詞に望美まだ、遠慮する望美に継母が言いました。



「譲くんは料理が好きなんですよ。彼にやらせてあげて下さい。」

「そ、そうなんですか?」

「そうですよ。何かリクエストがあったら言って下さい。」

「じゃ、じゃあ・・・・。私、ドリアが食べたいな。」

「はい!喜んで。」

「ふふっ。では、お昼までには戻りましょうね。」

「はい!お義母様」



と、このように。

継母達は可愛い望美を溺愛していたのでした。

そんなある日、望美の家にお城の舞踏会への招待状が届きました。

望美は喜んで早速、継母達に相談します。



「お義母さま。今夜、お城で舞踏会があるんです。行ってもいいでしょうか?」

「舞踏会・・・・・ですか?」

「はい!」



噂によると、この舞踏会は王子の花嫁探しの場と継母達は聞いていました。

しかも、王子は稀にみるプレイボーイで泣かせた女は星の数と専らの評判です。

望美を可愛がっている継母達は前日から口裏を合わせていました。



「ゴホゴホっ!」

「お義母さまっ!どうなさったんですか!?」



突然、咳き込んだ継母に望美はビックリしながら駆け寄りました。



「あぁ・・・・。すみません。どうやら昨日から体調が悪くて・・・・・・。」

「大変!寝て無くちゃダメですよ!」

「しかし、今夜の舞踏会には参加しなくては・・・・・。君も楽しみにしているのでしょうし・・・・・ゴホゴホっ!」

「そんな!無理しちゃいけませんよ。私の事なら気にしないで下さい。」

「望美さん・・・・・。ですが折角、招待状を頂いたんですから。」

「そうだ!もし良かったらお姉さま達に行ってもらえばイイじゃないですか?私はお母様の看病をしますから。」

「ありがとうございます。望美さん。君は本当に優しい人ですね。」



弱弱しく微笑む継母に望美は優しく笑顔を向けるのでした。

こうして、継母の仮病により望美は舞踏会に参加するのを諦めましたが

舞踏会で出される料理に夢膨らませていた望美は残念でなりません。



「はぁ・・・・・・。食べたかったなぁ。ご馳走・・・・・。」



と、そこへ。



「神子。貴女の願いを叶えるよ。」



眩い光と共に、望美のもとへ魔法使いが現れました。



「あなたは誰?」

「私は、白龍。貴女の龍だよ。」

「ホントに、私のお願いを叶えてくれるの?」

「もちろんだよ。神子。」

「ありがとう!あ・・・・・でも。私がお城に行ったらお義母さまの看病が・・・・・。」

「大丈夫だよ。私が貴女の代わりになろう。」

「ホント?それじゃあ。私、舞踏会でご馳走が食べたい!」

「うん。判った。叶えるよ。」



魔法使いは優しく微笑むと魔法の杖を一振りしました。

すると、望美は光に包まれて、普段着が煌びやかなドレスへ。

木の靴はガラスの靴へと変わりました。

その姿はいつも以上に美しく、魔法使いは思わず釘付けになってしまいました。



「スゴイ!神子。とてもキレイだ!」

「ありがとう。白龍。」

「貴女のこの美しい姿をいつまでも留めておきたいけれど・・・・・・私の魔法は夜中の12時で消えてしまうんだ。」

「え?12時で?」

「・・・・神子、ゴメンなさい。私の力が足りないから・・・・・。」

「そんな事無いよ!12時までなら余裕でご馳走食べれるもん。足りなかったらお持ち帰り用に詰めてもらうし大丈夫!」



望美の優しい言葉に魔法使いは喜びました。



「ありがとう。神子はとても優しい人だ。」



魔法使いは嬉しそうに、もう一度杖を振りました。

と、突然目の前に金髪碧眼の男が現れました。



「彼の名はリズヴァーン。馬車の変わりに彼と共に行くとイイ。一瞬でお城まで行けるよ。」

「良いんですか?」

「無論。」

「さぁ。神子、急いで。そして、楽しんで来てね。」

「ありがとう。白龍!!お土産持ってくるからね〜。」



魔法使いにお礼を行って、望美はお城へと急ぎました。



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