第九話 天の青龍の災難










楽しいティーパーティを終えた望美達は再び城を目指した。

もちろん、途中にはあの『惟盛草』が居る。

バレないようにコッソリ歩いて居たにも関わらず、辺りに居た鉄鼠が望美を見つけて、惟盛草に知らせてしまった。



「こうなったら戦うしかない!」



先程は負けてしまったが、今度は勝てる自信があった。

美味しい物をたらふく食べて気力は十分。

新たに仲間も増えた。

けれど、油断は禁物。

慎重に・・・・・・。


ザシュッ!!


そんな事を思いながら剣を構えた途端に、何食わぬ顔で将臣が大太刀を振り下ろし、鉄鼠は断末魔の叫びを残して消えた。

そして、惟盛草もヒノエ、譲らの活躍であっさり片付いてしまった。



「・・・・・え?終わり??」



瞬間の出来事に、望美はポカンとする。

余りにも、あっさりし過ぎ。



「なんだよ。お前らこんな奴に手間取ってたのか?」



将臣はかったるそうに肩をコキコキ鳴らしながら言った。

なんか、悔しい。

望美は少し、ムッとした。

それを察して、譲が望美をフォローをいれる。



「これだけ人数がいれば当たり前ですよ。先輩。」

「頭数の問題か〜?ただ単にコイツが弱っ・・・・・。」



将臣が言い終える前に譲の肘打ちが彼のみぞおちに炸裂した。



「?どうしたの将臣君。」

「何でもないですよ。さぁ、先輩。お城に急ぎましょう。」

「そうだね。お城に行こう!」



後方に、苦しむ将臣の姿があったが気にかけたのは敦盛ただ一人であった。



「だ、大丈夫ですか?将臣殿。」

「お、おぅ・・・・・。」



一行は城へ向かって進んだ。

以降、これと言った障害も無く、順調に歩んでいくと。

生い茂る木々を抜け、やっと出たそこは、大きな、大きな城を囲んだ門だった。



「やった!」



望美は歓声をあげた。

当初の目的云々よりも大きな達成感で望美の胸はイッパイになる。

と、そこへ。

大きな耳を揺らして走る九郎の姿を見つけた。

彼は、一心不乱に走り門を潜って中へ入っていく。



「ああ!!九郎さん!待ってください!!」



望美は後を追って走っていった。

門には門番も無く、簡単に中に入れた。

広大な敷地に望美は驚き、落ち着き無く辺りを観察する。

その庭には大量の白いバラ。

美しい白いバラもここまで多いと若干。



「・・・・・匂いがキツイ・・・・・。」



こみ上げる匂いに望美は顔を顰めた。

突然走り出した望美を追って、皆がやってきた。

そして、望美と同じような反応を示す。



「何だこりゃ。」

「確かに綺麗だけど・・・・・限度って物が・・・・・。」

「美しい花も着飾り過ぎれば、毒々しいもんだね。」



しかも、これ程広い庭にも関わらず、生えている花は白いバラのみで、他の花は一切無い。

一つくらい違う花があってもいいとは思うのだが・・・・・。

そんな事に頭を悩ませる望美に弁慶が言った。



「望美さん。ウサギを探しているんじゃなかったんですか?」

「あ!そうでしたね!!」



ハッと、思い出すと望美はまた、辺りを見渡す。

追いかけてきたはずの九郎ウサギの姿は欠片も無かった。

と。



パラパラッパパラパ〜 



高らかなラッパの音が響いた。



「な、何?」



望美は驚いて音が聞こえた方を見た。

城の奥の方から、なにやら歓声も聞こえてくる。



「お祭りかな?」

「う〜ん・・・・。祭りって言うかなんていうか・・・・・。」

「景時さん、何か知ってるんですか?」

「え!?う、う〜んと・・・・・・。」

「とりあえず、行ってみてはどうですか?望美さん。何か判るかもしれませんよ?」



弁慶に言われ、望美は城の奥へ進んでいった。






「これより、第89回クロッケー大会を開催いたします!!」



のろしが上がり、歓声がこだまする。

城の奥ではクロッケー競技場を取り囲むように大勢の観客が押しかけていた。



「・・・・・クロッケー大会?」



望美の頭上にクエスチョンマークが飛ぶ。

そんな彼女の横で、将臣は溜息を吐き、景時は苦笑いを零していた。



「ど、どうしたの?」

「いやぁ・・・・。また始まったんだなぁ〜と思って・・・・。」

「だから、俺は来たくなかったんだよ。」



あからさまに嫌そうな顔で将臣はぼやいた。

全く事情が飲み込めない望美に弁慶が説明を始める。



「この城の女王と、隣の城の王はとても仲が悪いんです。それで、お互い、どちらが強いかをこの大会で証明しようとしてるんですよ。まぁ。今の所お互い44勝44敗で引き分けてるんですが。」

「は、はぁ・・・・。」

「あぁ、ほら。主催者達がやってきましたよ。」



そう、弁慶が指差した先には、互いに供を連れた上品そうな女性と、幼い少年。

けれど、そんな容貌にはそぐわない程の禍々しい雰囲気を醸し出していた。



「フッフッフ。今日こそは泣きっ面を拝ませてもらおうか女狐め。」

「まぁ、怖い。けれど、泣きを見るのはどちらかしら。」



互いに火花散らせる両者。

その2人を見ながら望美は指差した。



「・・・・え?あれって、政子さんと清盛・・・・・。」

「白の女王と、赤の王です。」

「え?え?」



弁慶からの説明に益々混乱する望美。

と、白の女王の横から大きなウサギ耳が姿を現した。



「ふふふ。今日こそは勝つのですよ。九郎。期待しているわ。」

「はっ!必ずやご期待に沿いましょう。」

「ふん。かようなウサギに何が出来るか!どれ、こちらは・・・・・・。む!重盛はドコじゃ??」



赤の王はキョロキョロと辺りを見渡し、『重盛』を探した。

けれど、姿は無く王は軽くパニくった。



「し、重盛はどこじゃ!!重盛〜〜〜〜!!!!」



会場中に響き渡るような大きな声で呼びかける。



「誰ですか?重盛さんって?」

「赤の王の嫡男で跡取り息子ですよ。」

「ふ〜ん・・・・。って、どうしたの?将臣くん。」



望美は忍び足でこの場を去ろうとする将臣の背中を見つけて声を掛けた。

将臣はビクッと体を強張らせる。



「い、いや・・・・・。ちょっとヤボ用が・・・・・。」



ぎこちなく言って去ろうとした途端。



「おぉぉぉ!!重盛!こんな所におったか!!」



壇上から飛び降りた赤の王は嬉しそうに将臣を見つけて駆け寄った。

そして、ガシッと将臣の肩を掴み、およそ彼の体からは想像出来ない力でズルズルと引っ張っていく。



「は、放せっ!放せ〜!!俺には関係ねぇ!」

「何を言っておる重盛。コレは全て平家の名誉と誇りと・・・・・。」

「だ〜か〜ら。俺は重盛じゃねぇっての!!第一クロッケーなんてゲートボールじゃねぇか!
そんなジジ臭いもん誰がするか〜〜〜〜!!!!!」

「何を言っておる。ゲートボールはクロッケーを元にして作られたスポーツであって決してジジ臭くなど無いぞ?」

「似たようなモンじゃねぇか!!」

「ハッハッハ〜。重盛は面白い事を言うのぅ。」

「聞けー!人の話を聞けーーーーー!!!」



かくして、ここに前代未聞の天地の青龍対決が勃発した。



「え?ていうか、将臣くんが『重盛』なの?」



重大な事実判明。

だが、指して気にする者は居なかったようである。




>>>NEXT



〜あとがき〜
散々です。将臣くん(笑)
でも、愛があるのでOKです。

そういえば、ゲートボールを作ったのは日本人らしいですよ。



   
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